時に巡り合って — 小林敬生と陳琦作品展(生逢其時-小林敬生&陳琦作品展)

Title: Right Place Right Time

展示の様子1
展示の様子2
キュレーター
張遠帆(Zhang Yuanfan)
アーティスト
小林敬生(Keisei Kobayashi)& 陳琦(Chen Qi)
会期
2019.4.27(Sat.)-2019.6.30(Sun.)
会期延長
〜7.14(Sun)
会場
アジアアートセンター(北京) 亜洲艺术中心(北京)
住所
北京市朝陽区酒仙橋路2号大山子798芸術区
展覧会の動画
https://www.youtube.com/watch?v=hnH-Gp9gdQQ
(小林敬生氏が話すところは日本語ですが他は中国語^^)
ポスターイメージ
Right Place Right Time

あの日あの場所で…このときこの展覧会の小さな小さなきっかけが生まれたのでした。

在由世上无数的生灵交织成的庞大的生态系中,人类只占其中的一小部分。那种认为人类是众生之首的想法,实为虚妄的傲慢。人类端赖挥汗劳作,才能换回自己的口粮。我专心雕刻木板,就如同耕作土地一般。这种一以贯之的劳作姿态,便是我奉献给现代社会的赠言。—小林敬生

从1986年至今,有一条主线始终贯穿在我的艺术实践中,那就是对中国式心智的不懈探求,并试图通过繁杂的手工劳作纯化心灵和智性,从而达到对事物本质的领悟。我想“本质”是艺术家心灵创造的“原点”,由此出发,经物质媒介的表现再回到原点。这是一个密布诱惑、陷阱的创造之路。—陳琦

3人

(左)張遠帆(本展覧会キュレーター)(中)小林敬生(右)陳琦

展覧会リポート

展示会場入り口

北京の798の中央に位置するアジアアートセンター。
(左)小林敬生(右)張遠帆

展示の様子3
展示の様子4

2019年4月27日から6月30日まで中国有数のアートスペース、北京798内のアジアアートセンターにて小林敬生と陳琦の二人展【Right Place right time】が開催された。二人には非常に共通点が多くその比較が興味深い。

小林氏は木口木版画、陳氏は中国伝統の*水印木版画という木版画の中でも極めて専門性の強い分野をベースにして制作を展開している。
*日本、中国どちらの美大も版画専攻の学生は4つの版画コース(木版、銅版、リト、シルク・デジタル)に概ね分かれるが、その木版コースを選んだ人の中で毎年1人ないし2人くらいが専攻するかなりのマイナー分野。

また作品はどちらも白黒の世界を中心に展開している。一言で白黒といってもその間に無限の灰色の階調があり、その表現方法も多様だ。1人は彫り進めることでその表現を求め、制作した作品を寝かせて、また彫りなおしたりもしている。もう1人は墨の濃淡、水の量の調整をして白と黒の間に広がる灰色の濃淡を探求している。

一般的には木口木版も、中国伝統の木版技法である水印木版画も、小さいサイズの作品に用いられることが多い技法だ。木口木版という技法が生まれた19世紀では本の挿絵などで、明治期では、新聞の写真の代わりに一時期使われた。微細な表現を得意とする技法である。新聞写真の代用された期間が非常に短かったのは、それほどに複雑で手間のかかる技法であるからだった。

水印版画もまた、水墨画の教本などを作るために利用されている。代表的な水墨画の教本である芥子園画伝は、この技法によって複製され世に広まった。職人が文字まで彫っていたわけだから、非常に細かいものを表現することができる技法だ。どちらも共通点としてはいわゆる「本」のサイズであるものが多いということ、微細な表現を得意としていること、そして制作に非常に時間がかかるという点だ。

ところが本展覧会で展示されている作品の中には、書籍サイズの作品は一つもない。小林敬生氏の2メートルを超える作品、陳琦氏の5メートル超の作品など、これら技法が生まれた頃の姿とは全く異なる姿へと変貌している。この既存の枠にはまらない、大胆な手法を生み出し、挑戦し続けるという点も共通点と言っていいだろう。

企画、搬入段階で感じたことだが、二人の負けん気が強烈に印象に残った。75歳になり老境に達した小林氏は、仙人のような心境で挑むのかと思いきや、画廊に展示した作品の3倍ものボリュームをストックルームで待機させていた。
一方中国を代表するアーティストである陳氏。北京の中央美術学院研究院長でもあり、ホームでの展示は圧倒的でなければならないと、小林氏の展示の様子をみて自身の展示スペースでの配置を大幅に変えて、オープニング当日までクオリティの向上にこだわった。

オープニングパフォーマンス1

北京で人気の現代舞踏家のパフォーマンス。
作品と見事にマッチしたスピリチュアルな空間を作り出していた。

オープニングパフォーマンス2

琴のパフォーマンス(リハーサル)

ボクシングのラウンドガールのように

公演ではボクシングのラウンドガールのように作品の下絵を持つ美女たち。

二人の仙人どころか本気でぶつかり合う姿勢はまるでアスリートのようであった。またオープニングセレモニーには中国を代表するアーティストたちが大勢会場に駆けつけてくださり、また北京を代表する現代舞踏家の演出もあり非常に華やいだのだった。

滞在中何度か酒宴があり、その席で意気投合した2人は、5年後またこの地で一緒に展示をしよう!と約束を交わし健闘を称え合った。

尚、陳琦は会期中、中国代表としてベネチア・ビエンナーレに出展をしていた。ベネチアでの展示作品は水印木版画を使ったインスタレーション作品。サイズはなんと、4mX24m超という。

観光で

一日時間が出来たときに北京故宮で。敬生先生は最初観光は興味ないといっていたが、やはり北京故宮は凄い、中国は何でもスケールが凄い!と感動していた様子。

ヴェネチア・ビエンナーレ1

陳氏の2019年のベネチア・ビエンナーレ展示作品。まさかこれが木版画だとは…

ヴェネチア・ビエンナーレ2
ヴェネチア・ビエンナーレ3

最後に

この展覧会の開催のきっかけは浜松市で開催された【版画一坪】という展覧会に陳琦氏が出展したことに始まる。2017年10月、東京都美術館で版画協会展があり、この年は特別に中国作家の作品が特別出展された。前年中国側が招待した展示のお返しであり、日中の双方の協会が尽力した企画があった。

その時、「日本にきて展覧会1つだけではもったいない。もっと多くの人に現代の中国の版画を知ってほしい」と版画協会理事である柳澤紀子氏が地元浜松にあるHirano Art Galleryの協力を得て開催した版画展覧会が「版画一坪」だった。この展示はまさに中国を代表する版画家が集結した展示だった。

この会場で陳琦氏の作品を見た小林敬生氏が強い印象をうけ、陳氏に「素晴らしい、是非いつか一緒に展覧会をやりましょう」といい、陳氏も「小林氏の作品は以前から存じ上げている。是非いつか!」というやり取りを通訳した。

その時は、イベントの高揚感などから出た言葉であり、まさか実現するとは思っても見なかったが、一年後陳氏から、実現出来そうだから小林氏に連絡をして欲しいと頼まれたので驚いた。それから半年も無い短い準備期間、あっという間に準備し成し遂げてしまったのだった。

アーティスト同士

すべての展示準備を終えたあと。やりきった感じがありますね。

小林氏の作品の前で

この巨大な作品に何百という生命が刻み込まれている。年単位の仕事だったと。

陳氏の作品の前で

中国でも水印木版画でこのサイズは普通ではない。

記念撮影

左から
アジアアートセンター 李宜霖社長
元中央美術学院美術館館長 王璜生教授
中国国家画院版画院執行委員長・中央美術学院 広軍教授
多摩美術大学名誉教授 小林敬生
中央美術学院 大箴教授
中国国家画院版画院秘書長・中央美術学院研究生院常務副院長 陳琦
中国美術学院 遠帆教授
中国芸術報 祥寧社長

略歴

陳琦 Chen Qi

1963年生まれ。湖北省武漢籍。北京在住。

中央美術学院副院長、中国国家画院画院秘書長。
中国美術家協会会員。中国美協版画芸術委員会委員。美術学博士。

主な個展

  • 中国国家博物館(中国)
  • 中国美術館(中国)
  • 南京徳基美術館(中国)
  • Oriental Museum(英国)

等多数

主な団体展覧会

  • 第7回、第8回、第9回 全国美展 銅賞、優秀賞。
  • 第13回  版画展 金賞 第五回北京国際美術ビエンナーレ優秀作品賞
  • 2017年 上海国際版画展(中華芸術宮)
  • 2019年 ヴェネチア・ビエンナーレ中国代表作家

等多数

ポートレートChenqi

小林敬生 (Keisei KOBAYASHI)

1944年
島根県生まれ
版画家 多摩美術大学教授
1978年
第2回版画大賞展/優秀賞
日動版画グランプリ/優秀賞('79、'81優秀賞)
1982年
第2回ソウル空間国際版画ビエンナーレ/グランプリ
1988年
文化庁買い上げ
1989年
第3回和歌山版画ビエンナーレ/優秀賞(第4回、第5回買上賞)
第19回現代日本美術展/ブリジストン美術館賞
第1回高知国際版画トリエンナーレ/佳作賞(1993年第2回展/大賞)
1990年
大阪トリエンナーレ・版画/主催者特別賞(1998年銀賞)
1997年
多摩美術大学教授就任
2003年
第1回北京国際版画ビエンナーレ/銅賞
2006年
秋の叙勲に於いて紫綬褒章を受章
ポートレートKeiseiKobayashi

Keisei KOBAYASHI

1944
Born in Matsue-city, Shimane prefecture.
Artist, TAMA Art University Professor
1978
Won the Superior Prize at the 2nd Japan Contemporary Print
Grand-Prize Exhibition '78 (Sep.7-12, Seibu Department Store, Shibuya, Tokyo).
1979
Won the 1st place of prize-nomination at the 10th Print Grand- Prize Exhibition 1979 (Oct.3-10, Nichido Salon, Tokyo/Oct.13-20, Nagoya Nichido Gallery/Nov.1-9, Osaka Nichido Gallery).
1981
Won the 2nd place of prize-nomination at the 12nd Print Grand-Prize Exhibition (Oct.12-19, Nichido Salon, Tokyo).
1982
Won Grand-Prize at the 2nd Seoul International Miniature Print Biennale (Nov.1-15, Space Art Gallery, Seoul, Korea).
1988
"Transferred Soul -S62・8-," selected as an annual superior work(1987), was purchased by the Agency for Cultural Affairs.
1989
Won the Superior Work Prize at the 3rd Wakayama Print Biennale
(Mar.4-26, Museum of Modern Art, Wakayama).
1989
Won Bridgestone Museum of Art Prize at the 19th Contemporary
1990
Won the Fine Work Prize at the 1st Kochi International Triennial
Exhibition of Prints (Mar.17-Apr.15, Inocho Paper Museum).
1991
Won the Organizer's Special Prize at the Osaka Triennale 1991 Print: the 2nd International Contemporary Art Competition (Nov.27 to Dec.11, Mydome Osaka, Osaka).
1993
Won the Grand-Prize at the 2nd Kochi International Triennial Exhibition of Prints (Mar.13-Apr.18, Inocho Paper Museum, Agawagun Inocho, Kochi).
1993
Won the Purchase Prize at The 5th Wakayama Print Biennale
1997
Became professor in the Faculty of Art, Department of Oil Paining,
Printmaking Course, Tama Art University. Became a member of The Committee of University of Art & Print Studies in Japan (presently, a member of operating committee).
2003
International Print Biennale of Beijing 2003 (Sep.6-18, Beijing, China).
2006
Won the the Shiju hosho (Medal of Honor with Purple Ribbon)