柳澤紀子展(養清堂画廊)

2020年4月26日、チェルノブイリ原発事故記念日からおよそ一ヶ月間、ウクライナ・キエフの美術館で個展開催を予定している。
その展覧会の原型ともいえる展覧会が銀座で開催された。

9月9日、オープニング前夜は東京に台風上陸、当日の朝も交通のダイヤの乱れで都内のあちこちの駅で2時間も3時間も待つ人達が出るほどの荒れた一日だった。

会場はいつもの養清堂画廊、先代のオーナーのときからずっとやっている作家のホームギャラリーだ。私は今年3月にあった浙江美術館の展示に携わっており、その時に作家が「初期の作品から、現在の自分を見てもらおうと最新作まで持ってきました」という言葉をおぼえている。

展覧会DM

本展覧会はそのときの最新作【動物の言葉】シリーズから始まる。
作家の描く動物は、神々しい動物、半人半獣のような姿のものたち。荒涼とした土地に簡素な家やレンガ造りの壁、ひび割れた道路の脇にはロシア語の書かれた立て看板が描かれている。

動物のことば

動物のことば ニガヨモギⅡ

動物のことば

動物のことば ニガヨモギⅢ

動物のことば

動物のことば ニガヨモギⅣ

作家のメインテーマの一つに「核」がある。チェルノブイリ原発事故に強いショックをうけ、地元が近い浜岡原発にも関心をもち、そして東日本震災で日本列島とともにダメージを受けた。浙江美術館でも展示された作品「Test Zone(2)」は2006年に作られた核がテーマの作品。柳澤の版画作品では最大級のサイズで、画面もキラキラした明るい作品だ。テーマは【核】そのものだから暗く、重々しく描いたら本当に憂鬱になってしまうから、核融合のキラキラとしたポジティブなイメージを画面に表現したと本人はいう。核は本来なら人間が制御することが出来ない力、それによってもう30年も前に事故を起こしているのにまだ人はわからないのね…と浙江美術館で話してくれたのを思い出した。

作品の部分拡大
作品の部分拡大

いよいよチェルノブイリでの展示へ!という印象をうけた。

そして今回の作品でもっと気になった作品【動物の言葉 北緯51°】。本展覧会のDMに採用されたタブロー作品。北緯51°はウクライナ・キエフのチェルノブイリ原発の所在地を指す。新作のうち数点にはハザードシンボルが描かれており、昨年ウクライナ・キエフに視察に行った時のスケッチや記憶を元に描いたという。

もうそこには人はだれも住めなくなった土地。でもそこに植物はもう自生しており、動物たちもまた回帰しているという。人間が作った人間が住めなくなった街を植物や野生の動物がすみかにしているという現象を描いた動物のことばは一体何を語っているのだろうか。

記念撮影

左から 田中彰、池田良二、作家本人、湯浅克俊

オープニングには武蔵野美術大学の版画を支えてきた池田先生、世界で活躍する湯浅克俊氏、田中彰氏も出席されて華やいだ雰囲気となりました。

日程:2019年9月9日(月)―21日(土)
会場:養清堂画廊 東京都中央区銀座5−5−15
テキスト:竹内健太